宝石の道の6日目、2013年11月23日(土)
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水平距離
17.43km
沿面距離
17.58km
全体平均速度
1.89km/h
移動平均速度
3.33km/h
最高速度
12.68km/h
昇降量合計
473m
総上昇量
309m
総下降量
164m
最高高度
4674m
最低高度
4381m
いつも通り7時出発。いつも7時出発になってしまう理由は、気温。マイナス10℃の中を自転車で走ることは、かなり大変。結局、日が出てすぐの7時出発というのが僕たちの自然な習慣になってしまっている。
(コーラは凍り、ひっくり返してもそのまま…。温度計はマイナス10℃を指し、上下ダウンウェアを着て、極厚の寝袋に包まる日々。)
さて、この日も相変わらずの深砂。自転車に乗って走ること叶わず、押し続ける。しばらくすると峠にさしかかる。ここもかなりの急坂、そしてガレ場。ガレ場を抜けると、平地に出るが、やはり乗ることができない。景色が変わると「もしかして自転車に乗ることができるかも」と、期待するのだけど、結局乗ることができない。
そして、ここで今日の大問題が発生。
彩の自転車につけている1.5Lのペットボトルから水が漏れだしていた。どうも早朝凍っていたペットボトルが膨張して破裂し、気がつかないままになってしまっていたらしい。深砂で前にも後ろにも容易に進むことができない場所で、貴重な水をロストしてしまった。
僕たちは通常、各々自転車に3Lの水を積んで走る。その他に折りたたみ式の2.5L水筒を4つもっていて、合計16Lの水を運ぶことができる。一日2L、二人で4Lの水を消費するので、最大で4日の水を積むことができる。 今回は事前に補給地点などを調べ、最大の16Lを積む必要はないと判断して、6Lの水を積んで走っていた。
しかし、予想以上に厳しい悪路に走行距離は伸びないまま。それはつまりキャンプ日数が増加することを意味し、食料や水が当初の想定より多く必要になる、ということにほかならない。
残り4.5Lの水。今のペースが上がるとは限らない。逆にもし路面状況が好転せず、悪路が続くようであれば、到底次の補給地点まで水がもたないことは明白。水がなければ、最悪の状況も想定できる。
この水漏れ事件以降、走行中の飲水も極力制限し、食事も水を使わないクッキーやパンなどの固形物に切り替えることにした。万が一、水が補給できないまま前進を余儀なくされた場合に備えて早めに自衛手段を講じることに。水はあくまでも走行中の飲水として確保する。高所では水を飲まなければならないが、水が切れてしまっては元も子もない。
—
さて、峠を越えても路面状況は一向によくならない。ひたすら押し続ける。 時速は1.5km前後。1時間押しても1.5㎞程度しか進めない。もちろん歩いたほうが早いが、自転車があるためそう簡単にはいかない。乗れない自転車はもはや走行の負担になるばかり。
深砂の中を自転車で進むというのは、南極観測船に似ている。 南極の氷の中で、南極観測船はラミングあるいはチャージングと呼ばれる方法で前に進んでいく。 氷を砕けない場合、一度下がって、全速力で助走し突進して氷に乗り上げて砕き、前に進む、という方法だ。
僕たちがやっていることも全く同じ。 深砂にスタックすれば、前輪の前に砂の山ができる。その位置から前に進もうとしても、重量50kgの埋まった自転車はびくともしない。 仕方なく、後ろに下がって、もてる全ての力を振り絞って助走し、砂に乗り上げ、砂の山を崩していく。
それを標高4500mの低酸素状態で延々と10時間近く繰り返すのである。…まともな食事を摂らず。4日間も…。
あるいは、頭に浮かぶのは昔の刑罰のひとつ、「穴を掘っては、その穴を埋める。水を汲んでは、水を捨てる」、というような無駄な作業を与える刑罰(JR西日本や国鉄で問題となった教育方法のような)である。
延々と深砂の中、自転車を引きずるというのは、精神的にも体力的にも相当な負荷を心身に与える。
16時、目の前に分岐点が見えてきた。 初めはチリ国境への分岐かと思っていたのだけど、よく見ると「ホテル」と書いてある。 自転車を彩に押さえてもらい、丘を越えて偵察を試みる。
遠くに一見新しい建物が立っていた。人影はこの距離からでは見えない。
途中にホステルがあるらしいという情報は持っていたが、このホテルがそのホステルかどうかはわからない。閉鎖されて廃墟になっているのかもしれない。
でも、僕たちは、イチかバチかに掛けてみることにし、この建物に向けてハンドルを切った。
ようやく建物の詳細がわかるような距離になったころ、天井で何かが動いた。人影のように見える。
近くに近づいてみると、どうやら工事をしているようだ。人がいることは確定。
ホテルの正面に回りこむと何台ものランクルが泊まっていて、とても立派なホテルが立っていた。ホッとしたのも束の間、空室があるか聞いてみると、今日は予約で一杯らしい。こんな僻地中の僻地で予約で一杯とは…。ちなみに料金は1泊70ドル。このボリビアではかなり高額な部類である。
ホテルのスタッフはとても親切で、水はなんと無料でくれるとのこと。しかもホットシャワーを無料で使って良いと案内してくれ、テントは工事中の場所、四方を断熱材で覆った場所にテントを張るように、と言ってくれた。
もうヘトヘトの僕たちは、ひとり14ドルでディナーだけいただくことに。食事ができるまでの間、食堂でのんびりさせてもらった。久々にシャワーも浴びることができ、水も反省をいかして、持てる最大、16Lを積む。これでもう何泊キャンプしても安心。気持ちに余裕ができたところで、今日のディナー。なんとコース料理である。
(欧米人の旅行者を中心に満室のホテル。こんな僻地中の僻地で立派な料理・・・一体どうなっているのやら・・・)
前菜、スープ、メインとデザート。 これが正しいお金の使い方だ、と二人で話し合って、就寝。
まったく大変な一日だった。
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